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特に何か動くわけでもない景色を眺めているとざわついていた空気が少しだけ落ち着いたような気になる。
お互いの何でもない動きがちゃぷんっと音を立てる以外は。
「キスしたらアカン?」
「げっ!?」
不意を突かれ、雰囲気など皆無な声が出た。
聖護は何とも言えない切なそうな表情で笑う。
「その反応ちょっと傷つくな」
「そ、そんなん急に言うからやろっ」
「前置きがあれば良かったん?」
聖護は「こんな風に?」と言って指の甲で俺の頬を撫でた。
一気に周囲が色づいて、静かだった木々がさざめき出した。
「急に触ったら怒られるし、確認しても拒否られるし、菫梨くんに触んの難しいな」
そんな本気とも冗談とも取れる言い様に俺は思いの外締めつけられた。
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