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それでも聖護みたいに思っていることをつらつらと言葉にすることができずに下を向いていると頬にあった手が後頭部へと動いた。
「それが菫梨くんやもんな」
ゆっくりと撫でる手が穏やかな声とリンクして、締めつけられて苦しい胸の内をほどいてくれる。
「聖護は何でそんなに普通に言えるん?」
「ん?」
揺れる水面にどうにか意識を集中させようとするけれど、どうしたって自分が聞こうと思っていることに羞恥が込み上げてくる。
「いや、だから……」
「好きとか?」
「……っ」
この期に及んで言い淀んだ言葉をここにきても聖護にさらっと持って行かれ「あ……うん」としか言えない。
そして続いた予想外の答えに思わず顔を上げた。
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