おやすみ、世界

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「そうやろ。俺が菫梨くんをこっちまで引っ張り込んだん。 そやから……」 そう言った聖護の視線がふいっと俺から逃げた。 そしてやっぱりここでも聖護の気持ちが透けて見えてしまうのだ。 「お前な、俺のことどんな人間や思てんねん? 簡単に男に足開くヤツやと思ってんのか? あ?」 大概、言葉遣いと口調が荒くなっている自覚はある。 普段から聖護には雑な扱いしかしていないけれど、こんな風に詰め寄るのは初めてかもしれない。 「菫梨く……」 「生半可な覚悟でお前にだっ……抱かれたと思ってんのかっ!?」 そう自分で言っておいて瞼の裏がぶわっと膨らんでしまう。 絶対に泣くもんかと堪え、言いたいこと、言わなきゃいけないことを吐き出した。
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