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「お姉さん、まだバイト終わんないの?」
偶然通りかかった風を装って、僕は階段に腰掛けている彼女に声を掛けた。
相手はびくりと肩を震わせて振り向く。
「セディだったのね」
こちらを見返す青の瞳に失望が滲んだ。
「普段ならもう上がる頃だよね?」
顔に間抜けな笑いを貼り付けたまま僕は再び問う。
「お姉ちゃんもジョニーも今日はまだみたい」
彼女は白い息を吐くと両手に抱えた物を胸に抱きしめ直した。
ピンクのハート型の箱に真っ赤なリボンを結んだプレゼント、か。
ベタ過ぎる。
いかにも「本命チョコです」ってラッピングじゃないか。
「二人とも?」
僕は大げさに二本指を立ててみせた。
君が待ってるのは本当は一人だろう?
彼女はまた白い息を吐き出すと頷く。
「ええ」
ハートを抱える小さな手がいっそう強く握り締められた。
僕の中でギュッと心臓を締め付けられるような熱い痛みが走る。
「この寒いのに大変だね」(了)
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