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しかし、外見が悪いのでないなら内面、つまり人格に問題があることになってしまい、都合が悪い。そんな事実は受け入れるわけにはいかない。こんな見た目に生んだ親が悪いと、人のせいにしておいた方が楽だった。自分と同程度のルックスの男子が、トークのうまさでクラスの人気者の地位を確立するのを見ても、歩はその事実を無視し続けた。
問題は歩のそういう卑屈かつ卑怯なところにあったし、人見知りで話下手なところにもあった・話しはじめに少しどもってしまうのも悩みの一つだった。会話の相手の目をまっすぐ見ることができず、いつもうつむいていた。
また、何とか話し始めたところで、どんなに盛り上がっている会話でも一気に冷え込ませるような言葉しか出てこなかった。歩には悪気はないのだが、どこかで見た知識を開陳するか、何でもディスるか、それ以外の言葉を持たなかったからだ。会話が終わるのも当然だ。畢竟、必要最低限以外は言葉を発することもなくなり、それは結果的に友達ができない悪循環を加速するだけだった。
友達が一人もいなかったので、休み時間は身の振り方に困ったものだ。いろいろ試した結果、最終的には好きな映画の原作小説など文庫本を読むのがならいになった。学校で絵を描くのは悪目立ちするだけでろくなことにならないと知っていたので、小学校でやめていた。机に突っ伏して寝たふりをするのはあまり得策ではない。寝たフリは結構バレているもので、アイツ話し相手いないから寝たふりしてるわ、と嘲笑される可能性がある。とはいえ、歩が何もせずただ呆然と前を見ていたところで誰も気に留めはしなかっただろう。それくらい空気的存在だったのだ。
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