8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
ある寒い朝、
ブラインドから漏れ出る光線を受けて
僕は寝返りを打とうか迷った
枕元にはエアコンのリモコンと
読みかけの歌集が横たわり、
その歌集には
リネン地のブックカバーが
掛けられているのだった
立ち上がる。
──AM6:45──
いかるの鳴き声が聞こえて
不安になり、
しばらく窓を睨んだ
遮光カーテンが嫌に赤く、
不気味だ
塵、
廊下のフローリングの隅に
僅かに残る塵
遠くに
2サイクルエンジンの
喘息ぎみの排気音がきこえて
やがてそれも消滅した
さて、虹はどこだ
僕は
死にきれないナマズのような
ヌタウナギのような
ヌチンにまみれた
醜い顔をしてい、
荒唐無稽の水槽の中で
ようやく原始的な肺呼吸を
行い始めた愚図にすぎない
朝はいつだって生意気に
(いや声高に)
僕の不足を指差し、
扁平足の
不格好な足跡を額に残し、
気味の悪い笑みを残して
去ってしまうのだった
──AM7:25──
塵は討たれた
光線も朝靄も
すべて
虹を望む僕の誤謬であった
空想の宮殿であった
おお、
柔らかな菜花の咲く丘よ
君は風の中で
唐突に振り返り
萌葱に浮かび上がる静脈と
袖のないワンピースと
僕のこころを裏返しにする
ドアを開けると春は近かった
寒さはいつの間にか姿をかえて
電線の交差する空と交わり、
加速度的に淡くなりつつあった
最初のコメントを投稿しよう!