あしあと

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ある寒い朝、 ブラインドから漏れ出る光線を受けて 僕は寝返りを打とうか迷った 枕元にはエアコンのリモコンと 読みかけの歌集が横たわり、 その歌集には リネン地のブックカバーが 掛けられているのだった  立ち上がる。 ──AM6:45──  いかるの鳴き声が聞こえて  不安になり、  しばらく窓を睨んだ  遮光カーテンが嫌に赤く、  不気味だ  塵、  廊下のフローリングの隅に  僅かに残る塵  遠くに  2サイクルエンジンの  喘息ぎみの排気音がきこえて  やがてそれも消滅した    さて、虹はどこだ  僕は  死にきれないナマズのような  ヌタウナギのような  ヌチンにまみれた  醜い顔をしてい、  荒唐無稽の水槽の中で  ようやく原始的な肺呼吸を  行い始めた愚図にすぎない  朝はいつだって生意気に  (いや声高に)  僕の不足を指差し、  扁平足の  不格好な足跡を額に残し、  気味の悪い笑みを残して  去ってしまうのだった ──AM7:25── 塵は討たれた 光線も朝靄も すべて 虹を望む僕の誤謬であった 空想の宮殿であった  おお、  柔らかな菜花の咲く丘よ  君は風の中で  唐突に振り返り  萌葱に浮かび上がる静脈と  袖のないワンピースと   僕のこころを裏返しにする ドアを開けると春は近かった 寒さはいつの間にか姿をかえて 電線の交差する空と交わり、 加速度的に淡くなりつつあったimage=498333669.jpg
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