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「こんなところで何やってんだよ」
泣きそうな顔で見上げたそこにいたのは幼馴染みだった。
「あんたこそ何でこんな時間にいるのよ」
「兄貴の見舞い。兄貴宛のプレゼントが家に大量に届いたから二往復目。人気者の兄を持つ弟なんて惨めなもんだ。お前も兄貴にチョコ渡すって張り切ってたろ?」
「上手く作れなくて遅くなって、そしたら面会時間終わっちゃって『ご家族以外はご遠慮下さい』って」
幼馴染みと言っても他人は他人。無理を言ってお兄ちゃんに迷惑かけるのは嫌だから諦めたものの、やっぱり悔しくてここから動けずにいた。
「お兄ちゃん私のことお嫁さんにしてくれないかな、そしたら他人じゃなくなるのに」
「じゃあ俺の嫁にしてやるよ。そしたら兄貴とも『ご家族』になれる」
ぶっきらぼうな呟きだったけれど、真っ赤に染まった耳は真実を語っていて、負けないくらい赤い顔で、私は幼馴染みに持っていたチョコを押し付けた。
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