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あの夜は最悪だった。
最悪というと聞こえが悪いが、ただ単に私の機嫌が悪かったのだろう。
「でねー、そこのbarで偶々あった人の印象最悪だったの」
「ねぇ、凜。あんた合コンの愚痴しに来たんじゃなかったの?」
その翌週の金曜日。
私は高校の時からの親友である怜の家を訪れていた。
お互い社会人。私は短大卒業後OL、怜は四年生大学を卒業したのち大学で取得した幼稚園教諭の資格を活かして幼稚園で働いている。
お互い、なんでも言い合える友達。
結婚式は友人代表お願いねと言い合える味方。
「合コンも最悪だった!あの下心野郎とは二度と会いたくない」
「本当にダメ男引っ掛けるのうまいよね凜は」
「なんでこうなっちゃうんだろ・・・」
「見た目はいいのに。愛想の良さと社交性が仇になってるのよ」
彼氏がいつからいないかなんて覚えてない。
中学のあれは数に入らないし、短大のあれも数に入らないし・・・
考えれば考えるほど、まともな男性には縁がなかった。
「そのbarで知り合ったっていう人は?顔と体はよかったんでしょ?」
「やめてよー!その一夜間違っちゃいましたみたいな言い方」
「だってそうじゃない。身長は?」
質問攻めが始まった、身を乗り出し興味深々の怜に呆れながら一つ一つ答えていく。
身長は180はあった。年齢は30手前か前半。
細身でもなければ太ってもいない。眼鏡に、高そうな時計。
「なにそれー!超良質物件じゃない」
「いや、顔は確かに格好良かったと思うけど・・」
「思う?」
「印象悪すぎてあんま覚えてない」
「あっはっは、最高!!」
そう、あんまり覚えてない。
あの時はbar自体、私の二次会的な感じだったのもありお酒も結構入ってた。
奢ってもらったカクテルも甘めでおいしいと思ってはいたが結構強かった筈だ。
僅かにしか確認できなかった顔はうる覚えで、確かに分かっていたのは癪に障るあの印象と、男性特有の低い声だけだった。
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