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あの日、結局終電なんて諦めてたから、タクシーで帰る予定だった。
店を出たのは1時半過ぎだろうか。
宮瀬という男と一緒に店を出た。
「その後は?」
「え?」
「一緒に店出たんでしょ?」
「あぁ、少し歩いてタクシー拾いやすい所まで出て分かれたよ」
きょとんと目を丸くした怜が、信じられないと言わんばかりの顔をしてるのを私は見逃さなかった。
よく聞く話だ。飲み会で意気投合た異性とそのまま一夜を共にして、これって付き合ってるの?ただの体の関係?連絡していいの?とか。
きっと怜はそんな展開を期待してたのだ。
「つまんなーい!!」
「つまんないって何よ!」
「だってー、その宮瀬って人きっと凜の事気に入ってたと思うよ」
「なんで」
気に入ってたじゃない。あれは好奇心だ。
私が今まで知り合ってきた男とは少し部類が違うようにも見えたが
宮瀬にとっても私は部類が違う女だったのだろう。
それは彼にとっては良い意味だったのかは知らないが。
「まぁ、連絡先とか交換してないし。物珍しかっただけでしょ」
「でもさー、barで知り合った女が物珍しいってどーゆう事なの?」
「え?」
怜の言葉の意味がよく分からなかった、ニュアンスだけは大よそ伝わった。
座ってた足を組み直して、目の前にあった缶チューハイを一口煽る。
安っぽいオレンジ風味の酒が喉を通ったとき、私は思い出したかのように鞄を探った。
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