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よくよく考えてみると、怜と宮瀬は変な意味で似ているかもしれない。
「初めまして、凜から聞いてるなら話が早い。」
「宮瀬さんですよね、凜の親友の楓崎 怜です」
「珍しい苗字だな」
「よく言われます」
私を挟んで行われた自己紹介にハラハラしたのは私だけだろう。
怜の声がなぜ少し低くなったか、私にとっては嬉しい理由だが宮瀬にとっては複雑な理由だろう。
これは怜の癖とか性質とかそうゆうのではなく、私も逆の立場なら同じことをする。
だって――――――
「単刀直入に聞きます、宮瀬さん凜のどこが好きなんですか?」
大切な友達を傷つく姿は見たくない。
だから、その人が本当に互いにとって“いい人”かを見極める必要があった。
「凜、お前より強烈な第一印象だな」
「私より厄介ですよ怜は」
自己紹介の後に続くとは思えない直球な質問に、宮瀬は目を見開いた。
笑いを漏らしながら答えた私の顔を見て頭のいい宮瀬はすぐにその質問を理解していた筈。
もう4,5杯飲んだとは思えない程、ギラついた眼を見せる怜の口元は笑っていたが、その目は決して笑ってはいなかった。
「凜の好きなところね、その質問には個数制限あるのか?」
「ないですよー。でも一言で納得したいですね」
「そうか、手厳しい」
今ここで、この流れを止めるべきなのは私の役目。
でもそれをしたら怜の言った一つの質問が意味を成さなくなる。
黙ってるのも、一つの正解だ。
「一言で納得したいっていうなら、“脆さ”かな」
「脆さ・・ですか」
「あぁ、意味は君にも分かるだろ?」
「凜が言ってた通りですね」
そう言って怜は大きく笑った。
私が言ってた通りとは、第一印象の事だろう。
宮瀬の答えた言葉は含みがあり、パッと言葉で全てを現さない計算高さに私の言葉を思い出したのだ。
「か弱いって言わなかっただけ素晴らしいですね」
「か弱くはないだろう、人に頭突きする位だからな」
「あっははは、その話!前代未聞っ!」
「ちょ、っと!!掘り返さないでよ!」
この流れでその話を掘り返されるとは思ってなかった反面、怜が本当に笑った事にホッとした。
怜の目はちゃんと笑っていた。
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