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適当に走っているタクシーを捕まえ、それに乗り込む。
先に宮瀬が乗り、その後に私が続いた。
「凜、家の住所」
「えっと、」
催促され家の住所を言うとそのタクシーは走り出した。
そして、10分ほどで家に着く。
私だけがそのタクシーを降り、宮瀬は降りなかった。
「何持って来たらいいですかね・・?」
「服だけでいいだろ」
「女の子は色々あるんですよ」
「必要最低限にして、後は常備用に明日買いに行けばいい」
洗顔後のスキンケア用品とか、ボディバターとか毎日ちゃんとしてるのにと女心を切り捨てる宮瀬に文句を言うと想像通りの言葉が返ってくる。
もう、と溜息を付くとタクシーの扉が閉じ慣れた自宅のオートロックを抜けた。
部屋に着き靴を脱ぐとこれからまた外出するなんて思えない疲労感が襲う。
迂闊にベッドに座ればそのまま横になってしまいそうだった。
待ってる間もタクシーのメーターは動き続けることを頭の片隅に置き、とりあえず必要なものを近くの鞄に詰め込んだ。
「お待たせしました」
「随分量が多いな・・」
「え?必要最低限ですけど」
「一泊の旅行でも大荷物になるタイプ」
「うるさいですよ!」
肩に掛けて歩くにはやや大きくなり過ぎた鞄を見て宮瀬が呟いた。
大きいが、後部座席に一緒に乗り込むには余裕のある鞄を座った横に置く。
そしてまたタクシーは来た道を少し戻るように走り出した。
「それ、二日分?」
「一応」
「へぇー」
「なんです、一泊で帰してくれる気あったんですか?」
「まさか」
ふふんと言う様に鼻で笑った宮瀬は私にとっては十分有り余る後部座席で狭そうに脚を組んだ。
眠たいと言っていた割にその目はまだギラついてるように見える。
見慣れた道から、見慣れない道に差し掛かったのを見計らって背もたれに体重を掛ける様に体の力を抜いた。
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