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「透さんそろそろお風呂入らないと明日に差し障りますよ?」
どれくらいこうしていただろうか。
中々離そうとしない宮瀬に声を掛けた。
余程疲れているのだろう、いつもならキスを仕掛けたり冗談のようなことを言ったりして私を困らせる癖に今はただその腕に力を入れるだけ。
充電と揶揄したのは適当だと感じた。
「もう少し」
「駄目です!もう2時ですよ」
「分かったからもう少し」
何を言っても、もう少しもう少しと先延ばしにされる時間。
宮瀬の腕の中でもう何をしていいか分からなくなってきた私は、黙ってその胸に頭を預ける。
目を閉じれば寝てしまいそうだ。
「ねぇ透さん」
「ん?」
「やっぱなんでもないです。」
「何、気になる。言って」
話す話題が無いからと言って、我ながら馬鹿なことを考えた。
口から出す前に飲み込んだその言葉は声に出す自信が到底ない。
すり替えれる話題も思い浮かばない。
「なんでもないです!」
「じゃあ、俺が一つ聞いてもいい?」
「なんですか?」
口を堅く紡ぎ絶対言わないという素振りをすると、それを見てほほ笑んだ宮瀬が話の続きを始める。
「俺が居ない間、寂しかった?」
その綺麗な唇から割って出た言葉は、ついさっき私が宮瀬に聞こうとしていた言葉と全く同じものだった。
恥ずかしくて言えなかった私とは違って、なんの躊躇いもなく宮瀬はそれを口にする。
どちらかというと、聞かれるより聞く方が恥ずかしくなかったかもしれないと後悔した。
「・・・」
「なんで黙る?」
「どうしてそうやって・・」
「早く答えて、寂しかった?」
いってらっしゃいと一緒に残った宮瀬の感触は4日間忘れることができなかった。
そこまで分かっていれば、問われた答えは一つしかない。
今更、勝ち負けを競ったってしょうがないのに、頑なな感情は中々心を開かない。
「考えもしなかったです・・」
「そう、俺は寂しかったよ」
「え?」
「凜に会いたくて触れたくて仕方が無かった」
「・・・そ、ですか」
その素直さが羨ましい。
寂しかったって一言いえばいいのに、言ってる自分を想像するだけで顔が自然と下を向いた。
「だから、急いで帰ってきたんだよ」
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