Alexander's Sister - デリケート -

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下を向く私の顔をその手で上げて吹き込まれた言葉。 ぎゅっと目を瞑っても今は眠りには付けないだろう。 「透さ、ん」 「凜は寂しくなかったの?」 「私は・・」 「うん、何」 お風呂に入らなきゃいけないのにそんな事は忘れ、さらに言葉に溺れた。 そして、いつもなら皺になっちゃうからと躊躇うそのスーツを強く握る。 「私は寂しいっていうより心配でした」 「心配?」 「飛行機が事故に合わないかとか、食事はちゃんとできてるかとか・・」 「ずっと考えてくれてたの?」 「・・・はぃ」 それは寂しさとは少し違う。 仕事と区切られてしまえば我儘は言えない。 約束した週末に間に合わなくても構わない、無事帰ってきてくれればそれだけで良かった。 「凜、こっち向いて」 「ん・・っ」 私の言葉に宮瀬は何も言わない。 その代わりに優しいキスが降りかかった。 「素直じゃないのに、そうゆう事は言えるんだ」 「だって・・」 「出張も悪くないな、こんなに想われるなら本望だ」 離れた唇はそのまま遠ざかることなく、頬に、耳に、首筋へと触れる。 微かに響くリップ音に顔が熱くなった。 「ゃ・・です」 「凜?」 「そんなに頻繁に居ないのは・・嫌です」 頭の中でプツンと何かが切れた音を聞いて、宮瀬の首に抱き着いた。 吃驚したのか、急に動いた私に触れるその手は少し躊躇っていた。 しかしその躊躇いはすぐに消え、私の脇腹にその両手が添えられる。 「凜、どうした。いつもと何か・・」 「嫌いですか?こうゆうの」 「まさか、大歓迎だ」 宮瀬の肩に手首を掛ける様にして私はそっと距離を取った。 少し上目に宮瀬を見ると、視線がかち合ってまた唇が触れた。 「・・んぅ、苦し」 「我慢して」 「ふぁ、っ・・ん」 「可愛い、凜もっとこっち寄って」 十分近いはずなのに、もっとと求められる熱に体をさらに宮瀬に寄せる。 吸いつくようにくっ付いたり離れたりする唇に息の仕方が分からず酸欠気味になる頭。 ぼーっとしてきたときには上がった息に潤んだ目がさらに宮瀬を煽った。 「疲れてるはずなのにな」 「寝ます?」 「馬鹿言うな、なわけないだろ」 首を少し傾げた宮瀬がそう一言。 そのすぐ後に、力を入れられたその腕に私はソファーに背を付けた。
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