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「凜さんとは、性格が合わないお方ばかりだったんですよ」
言葉足らずだと思ったのかマスターは、その後も言葉を繋いだ。
不思議と違和感を感じないその言葉に、呆然と出た言葉はさらに先の意味まで欲しがる。
「・・なぜ?」
「え?」
「マスターはなぜそう思うの?」
単純に吃驚したのだ。
ここのbarに顔を出すようになって2年は経つが、私に恋人がいなく出会いを求めている事をこのマスターは知っていた。
少し男性関係で嫌な事があるとここにきて少しだけ愚痴ってたりもした。
その度に、推定50歳後半であろうマスターは
若いうちはそれくらいが丁度いいんですよ
そう言って話を聞いてくれた。ただ、そのネタの多さが問題だ。
こいつはどうしてダメ男ばかり引っ掛けるのか、そう思われてたと。
「貴方より倍は生きてますからね。」
「それだけ?」
「いえ、今までの話を聞いていても非があるのはいつも男性側だったでしょう」
「自分の話するのに自分を悪く言う人はいないと思うけど?」
「はは、それでもです」
マスターはそのあと少しだけ饒舌になっていた。
恋愛において、損をするのは男性の役目だと。
食事の勘定然り、車での送迎然り、そこのすべてに下心があるとは言わないがそこは女性に合わせるのが紳士だと。
「でも、凜さんのお話しはどれもお相手の下心しか見えないですね」
「あーあ、マスターが、あと20若ければ好きになってたかも・・」
ははは、と冗談っぽく受け流したマスターの前で飲みかけのモヒートを一気に流し込んだ。
そして、空になったグラスを確認してマスターは次の注文をさりげなく聞いた。
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