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----- カラン
店には数人の客しか居なかった。
しかし、みんな終電があるからとほぼ入れ違いでbarを出て行ってしまったからだ。
そんな中聞こえてきたドアーベルは無性に大きく聞こえた。
「まだ、大丈夫か?」
「これはこれは、宮瀬様。お久しぶりですね」
「あぁ、」
入ってきたのは背が高くてフレーム眼鏡をした男性だった。
スーツ姿でトレンチコートを羽織っており、肩が濡れていた。
「雨・・?」
思わず声が漏れた口を慌てて抑える。
幸いその男性は肩の水滴を払うのに夢中で聞こえてなかったらしい。
ドアーベルが鳴った時にマスターと同時に宮瀬と呼ばれた人を見て、傘持ってきてないと不安が募ったが、あまりジロジロ見るのも失礼だと思い
すぐに視線は逸らした。
「マルガリータをくれ」
「本当、お強いお酒がお好きですね」
彼は、私から席を一つ開けてカウンターに座った。
まあ普通だろう。いきなり横に座られたら少し嫌な気にもなる。
宮瀬という男はこのbarは初めてではないらしい。
しかし、久しぶりだとさっきマスターが言っていた。
身なりもそこそこ、腕時計なんてすごく高そうだ。
ただ、とても疲れているように見えた。
「凜さんは、何にいたしますか?」
「へ?、あ、えーっと」
「ここへ来る前に飲んでらしたんですよね、少し軽いのにいたしましょうか」
急にしおらしくなった私を見てマスターは注文の言葉をかける。
多少動揺してどもっていると、そんな私をみてマスターは一つの提案をして見せた。
そしてマスターが出してくれたのは、すごく見覚えのある赤と透明がグラデーションされた可愛らしいカクテルだった。
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