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「面白いな。お前」
印象が悪かったのは事実。
それを真正面から人に言ったのも初めての事実だった。
「宮瀬様。その辺に」
「いや、俺に印象が悪いだなんて言った女初めてだ」
「それは、凜さんが宮瀬様の事を何も知らないからでしょう」
「何も、知らない・・・か」
もう、ここに何をしに来たのかはすでに忘れそうになっていた。
合コンの終わり際に横にいた男が、店を出た時にメンバーの目を盗んで「いいでしょ?」なんて腕をがっしり掴みながらホテルのフロントまで無理やり引っ張られた。
そんな最低男の話を愚痴ろうとしてたのに。
一つ溜息を吐いて、勿体無い時間を使ってしまったを考えてると宮瀬が徐にマスターに声を掛けた。
「マスター、こいつにマルガリータ一つ」
「こいつではありません。凜さんです」
「凜に、マルガリータ一つ頼む。テキーラは薄目でオレンジで割って。」
「かしこまりました」
「俺には普通のもう一杯」
マスターは全く、しぶしぶカクテルを作り始める。
私はというと、愚痴り損ねたと両手で口元を覆い顔を隠しながらぼーっとリキュールの並んだ棚を眺めていた。
「どうぞ。」
「え?」
暖かみのあるダウンライトの店内は少し暗めで、ぼーっとしてるとつい眠くなる。
明日、友達に愚痴を聞いてもらおうだなんて何も詰まってない休日の予定を少しだけ楽しみにしながらその相手を頭の中で探していた。
そこに置かれた一つのカクテル。
オレンジ色の中身にグラス口には白い粒々したものがついていた
「こ、これは?」
「俺から。印象悪くさせたお詫び」
「え、いや、そうゆうわけではなく」
「いいから、ほら。乾杯」
頼み直したであろう二杯目をもって宮瀬が笑った。
私も乾杯とグラスを軽く合わせた後、グラスに口をつけた。
「・・・塩?」
「あぁ、此処のマルガリータはスノースタイルだ」
「スノースタイル・・・」
「分かってねぇなお前」
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