Aurora - 偶然の出会い -

8/8
前へ
/326ページ
次へ
「スノースタイルとは、グラス口に塩がついてることを言うんですよ」 優しい声色のマスターの声が耳を刺した。 なるほど、確かに雪が降って少し積もったかの様に見える。 「しかし、宮瀬様。さっきも申しましたがこの方は   「私、お前って名前じゃありません」 スノースタイルに関心してたのは本当で、マスターの声が聞こえてなかったわけでもないけど その言葉は私が私の声でこの人に伝えたかった。 だから、私は意地になったようにマスターの声をかき消した。 「・・・・あっははっははは」 「なんですか!?」 「いや、やっぱお前、いや、凜。面白いよ」 「・・・全く。手が付けられませんね」 最初はキョトンとしてた顔は少しの沈黙の後大きな声と共に笑い顔になった。 この時、入ってきたときにあまり見ないようにしていた宮瀬の顔をよく見たからなのか、雰囲気で感じ取ったのかは分からないが 宮瀬の飾りのようなフレーム眼鏡の下は、とても端麗に見えた。 「マスターなんなんですか?この人!」 「凜さん・・・すみません馴染み客なんですよこれでも」 「おいおい、俺はこの人なんて名前じゃない。」 「は?」 口からでる一言一言に無性にイライラする。 この宮瀬はと言うべきだったのか。 端麗な顔立ちから見える余裕が余計に私の感情を掻き乱した。 「宮瀬 透 だ」 「いえ、聞いてません。」 「ほら、名刺渡しておく」 「要らないですよ、今後会う機会もないかもしれないですから」 すっとカウンターを滑って出された名刺には“宮瀬 透”と書いてあった。 マスターはその行動をみて驚いていたようだ。 勿論、私なんてただのOL。名刺なんて持ち歩いていない。 「私、名刺もってないですよ」 「いいよ、凜だろ?名前」 「・・えぇ」 「上は?」 もう付き合ってらんねーって心で思って、奢ってもらったマルガリータを口に含んだ。 さっきは感情任せになった手前、味をすぐに感じれなかったが 今の一口は、オレンジの風味のなかにテキーラの香りがふわりとし、大人な味がした。 「上とは?」 「苗字だよ。凜は名前だろ?」 「・・・中峰です」 「覚えておく」 完全に穏やかな顔になった宮瀬に触れてはいけない毒に触れてしまったような感覚に陥った。
/326ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3910人が本棚に入れています
本棚に追加