第16章

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「でもショッピングの楽しさは別物よね。街を適当にうろうろ歩いて、気に入った服を鏡の前で当てて、試着したり。自分の靴を脱いで、新しい靴を履いたり。鞄を肩から下げたり。全部買う訳でもないのに、なんだかすっごく気分が上がるのよね。そういう訳で、栞。今日はわたしはそれを楽しみにきたのだから、しっかりショッピングさせて頂戴」 早口で言い終わると、エステラは黒縁の伊達めがねをかけて歩き出した。 と思うと、くるりと振り返った。 「ああ、そうそう。見えないけどマーのおっさんは常に近くにいるから。なにかあったらすぐに飛んでくるわ。だから、あなたはわたしに気を使うことはないのよ」 監視付きなのが歌姫のショッピング、か。 同情しそうになるのを抑えて、栞は急いでエステラの後を追った。
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