星は落ちている

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 階段で大事そうにチョコを抱える彼女は、体の向きに合わした方向を見れば広がる美しい夜景に顔を背けたまま、大学生の男女を見ている。展望台についたら夜景の美しさに目を奪われるが、彼女にとって目を奪われたのは幸せそうな男女だった。憧れは夜景の美しさよりも美しく見え、彼女の心と目は憧れを選んだ。 「まだ来ない」  彼女は好きな人を迎えたくて、展望台の最後の一段に座っていた。階段に座っている理由は、最初はそれだったが、今は展望台にたくさん恋人同士がいて、入る資格がないと思い座っている。約束の時間を二十分過ぎ、来るのか不安がよぎる。彼女はまだ高校生、二十分ぐらいでは怒らない。来るまで待つ、花を怖じけさせる執念の年頃。気持ちと憧れがある、十分に可愛い十七歳。  両手に抱えたたチョコは、遅刻の不満や挨拶より先に彼に飛び込むだろう。彼もそれを知っている。隠す気なく胸の前に大事に抱えられたチョコは、彼女の気持ちの在り方そのものだった。   image=498346972.jpg
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