抱き枕の恋ごころ

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「あの方は、少々強引な方で……私共がいながら、ご不快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。飲み物を新しく作り直させていただきたいのですが、よろしいですか?」 「……あの、ここで飲んでいってもいいですか?」 「はい。狭いところで申し訳ないですが、相沢様さえよろしければ、ゆっくりしてください」  今日はお酒はもういいかなという相沢にシナモンスティックと蜂蜜を入れたホットアップルティーを作り差し出した。 「すごくおいしい……なんかホッとします」 「それはよかったです」 「……残念だなぁ」 「えっ?」 「さっき、ママが話していたの聞いちゃって。翔太郎さんはノンケだからって」 「ああ……そうですね。ご期待に添えなくてすみません」 「ううん、いいんです。それに素敵な飲み物でいい時間を過ごせました。また来ます」 「ありがとうございます」  相沢を見送ってカウンターに戻ると、いつのまにか浩明の姿はなかった。 「さっき来たお客様と意気投合して出て行ったわよ、浩くん」 「えっ」  ママがそう教えてくれた。翔太郎がカウンターを離れていたのは、ほんの十五分くらいの間だ。狙う方の早業にも、浩明の決断の速さにも驚く。 「若いリーマン風の男の子。結構いい男だったわよ。そんな子がガチガチに緊張しながら浩くんに声をかけてきてね……浩くんてイケメン好きなのよね。体つきもよかったし」   この店がどういう店か、わかり過ぎる程わかっていたはずなのに、対象が知人になった途端動揺が走った。しかもただの知人ではない、思春期のある時までは親友だと思っていた男だ。  そこには、浩明は男を選んで出て行ってしまったという事実だけが残った。そして翔太郎にはそれを止める権利はない。
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