抱き枕の恋ごころ

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「ええっ!」  ざわつく店内――。  中には小さく驚嘆の声をあげる者もいた。 「ちょっと! 何事なの?」  常連さんと会話をしていたママが驚いて近寄ってきた。  今、翔太郎は水割りを顔からかぶってびしょ濡れ、周りには氷が散乱している。傍らには空のグラスを手に持ち、怒りで肩を震わせている浩明。その顔は紅潮して、息を荒らげている。 「翔ちゃん……浩くんまで、何事なの?」 「すみません……悪いのは俺です。ちょっと着替えてきます」  そう言ってバックヤードに向かおうとする翔太郎の手をがっしりとママが掴んだ。 「うっ……」  ものすごい迫力の顔に翔太郎も思わず後退さる。 「着替えたらそのまま休憩室にいなさい。いい? 表には出てこないで!」  ママの低く抑えた声が、逆に事の重大さを表しているようだ。翔太郎は「はい……」と小さく頷くと、店を後にした。  着替えを終えてしばらくすると浩明を引き連れてママがやって来た。 「浩くん、ごめんね。こんなところまで来てもらっちゃって」 「いえ……」  浩明は少し落ち着いたのか、先程のように激高した様子はなかったが、それでも翔太郎と目が合うと、鋭い視線を送ってきた。 「ママ……お店は…………?」
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