抱き枕の恋ごころ

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「浩くんはね……あることがあってから、ひとりで眠れないのよ」 「ママ、やめてよ。翔太郎には聞かれたくない」 「でも、ある程度は理由を話さなければ、今日あなたがこれ程怒った理由も、翔ちゃんはわからないでしょう」 「そうだけど……」 「とにかく、詳しいことはふたりで話しなさい。翔ちゃんはとにかく浩くんが許してくれるまで謝ること!」 「はい……」  そこまで言うと、ママはタバコの火を消して出ていってしまった。 「あっ、片付けと戸締りは俺やっておきますので」 「当たり前よっ」  ドアの向こうからダミ声が聞こえた。接客用の発声も今日は終了みたいだ。  カツカツと響くママのヒールの音が遠ざかると、翔太郎は浩明に向き直った。椅子を下りてその横に土下座する。 「浩明、本当に悪かった」 「おいっ……やめろよ」  ずっとつーんとして、翔太郎と目を合せなかった浩明がオロオロして土下座している翔太郎を起こそうとする。 「ごめんっ!」 「もういいからっ、やめてくれ」  引きずるように上体を起こされて再び椅子に座らされる。おそるおそる上目づかいで見上げた浩明は、翔太郎を許したわけではなく、土下座をされるというその状況が嫌だっただけというのがありありとわかる顔をしていた。 「なんで……ったの?」
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