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「へ……?」
「なんで、あんなこと言ったんだよ」
翔太郎が、浩明と共に店を出ていこうとした男に言ったことだろう。だが、男と消えていく浩明が面白くなかったなんて、自分でも理解できないあの時の気持ちを、浩明に説明することはできない。
「いや……それはもうほんと、どうかしてた。謝ることしかできない。ごめん」
浩明はもちろん腑に落ちない顔をしていたが、それ以上は詰め寄ってこなかった。もしかしたらその価値もないと思っているのかもしれない。
「それで、ママが言ってたことだけど……浩明がひとりで眠れないって」
「別にたいしたことじゃないから気にするな」
「たいしたことじゃないなら、ママがあそこまで言うわけないだろ?」
「眠れなくなるだけだから」
「は?」
「誰かが横にいないと眠れないんだ。それだけ」
「全く……眠れないのか?」
「まあ、そうだね」
「お前それ、大問題じゃないか!」
眠れないということは、心も体も蝕む大問題だ。翔太郎も一時期そういう時期があったからよくわかる。心はささくれ立つし、飯はうまくなくなるし、いいことなんてない。
「そうだとしても翔太郎には関係ない」
わかってはいたけれど、これ以上ないレベルの拒絶だ。そこまでのことをしてしまったのだと、今更ながら後悔しているがもう遅い。
「そのことは本当に悪かった。でもママから言われている以上、このまま浩明を放っておくわけにもいかない。ママの気性、少しは知ってるだろ?」
「……まあ、確かに」
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