抱き枕の恋ごころ

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 ママのあの剣幕では、このままふたりが別に帰ったと知ったら、翔太郎はもちろん、浩明まで怒られそうな勢いだった。 「セックスするってことか?」 「はぁ?」 「一緒に寝るって、そういうことなんじゃないのかって思ったんだけど」 「寝るじゃなくて、眠る、な」 「ああ……わりぃ。そっちの方か」 「まあ、一緒にベッドに入ってなにもしなくていいなんて言ってくれる奴はあんまりいなかったから、必然的にそういうことになるんだけどな」  淡々と浩明が答えた。ステディな彼がいないときはそうやって凌ぐか、どうしようもない時は不眠治療で処方されている薬を飲むらしいが、眠りは浅いそうだ。 「ってことは、横に誰かがいるだけでも、お前は眠れるってことだよな」 「えっ、ああ……うん」 「だったら俺がお前の抱き枕になるよ」 「はあ?」 「お前の添い寝相手を奪ったのは俺だから、ママの言う通り責任がある。浩明に大切な奴が出来るまでは、俺がお前の抱き枕になって安眠の手助けをするよ。ってか、させて下さい」  翔太郎は頭を下げた。  眠れないから男を誘う――とんでもない理由だが、浩明にとっては死活問題だったのだ。それを翔太郎の暴言で台無しにしてしまった。頭を下げた翔太郎を浩明はじっと黙っている。 「それとも、顔も見たくない程嫌われたんなら、他に方法を考えるよ……」 「そこまでじゃないけど……」 「それならとりあえず試してみないか。俺今、この上に住んでるんだ」 「そうなの?」  意外そうな声が聞こえた。
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