抱き枕の恋ごころ

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 店ではママが簡単なつまみや料理の作り方を教えてくれた。バーテンダーの仕事については本格的なバーではないからオーソドックスな注文に応えられればそれでいいと言われたが、何事も凝り始めると止まらない翔太郎は、本当は優秀なバーテンダーでもあるママにうるさがられながらも、いろはから教えてもらい、独自に勉強もしていて今日に至る。 「じゃあなんか、温かいの作って」 「了解。ラムは平気?」 「うん、好きだよ」  浩明がチーズリゾットを食べ始めたので、バタード・ラムを作ってテーブルに置いた。 「どう……かな?」 「リゾットも美味いし、カクテルも香りがとてもよくておいしい。ってか、美味すぎてすっげー太りそう」 「そんな細いんだから少しぐらい大丈夫だろ。毎日ちゃんと食ってるのか?」 「ん? ああ……まあ、戻って来たばっかだから、ちょっと忙しくてな」  浩明が『オリーブ』を訪れるのは、気分転換もあったのだろう。性的指向のこともあり、いつもどこか自分を偽っているような生活で気を張っているからこそ、自然体でいられる場所が必要だったのではないかと思う。  そんな気遣いすらできずに、最低なことをしてしまった。翔太郎は悔やんでも悔やみきれない。とりあえず今自分が浩明にしてあげられることは何でもしようと心に決めた。 「じゃ、そろそろ寝るか」 「うん……」
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