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「ベッド、狭いんだけど、俺が下で寝るより並んだ方がいいんだよな?」
「そう……だな。先に入って」
自分のベッドなのに少しだけ緊張しながら布団を持ち上げてベッドに入る。古いベッドはギシッと軋んだ。
「そのまま壁の方向け」
「あ……ああ」
いわれるまま翔太郎は壁に向けて体を傾けた。少しすると衣擦れの音がして、するっと布団の中に潜り込んでくる。
背中にそっと寄り添われてドキンと胸がなったが、息を潜めていると、後ろの浩明の鼓動も早かった。
むしろこういった場合は行きずりの相手の方がまだ、緊張しないのではないだろうか。浩明も同じなのだと思う。
思春期を共に過ごした友人の男と、ひとつ布団の中にいる非日常。
多分ここで何か言葉を発したら、修復不可能なくらい揉めるか、違う間違いが起こりそうだ。それくらいありえないこと。
後ろから浩明の腕が遠慮がちに伸びてきて翔太郎の脇腹をかすめる。
「っ!!」
伸びてきた浩明の手首を掴んで、自分の方に引き寄せたため、浩明が小さく声を上げた。翔太郎はお構いなしで密着した体が離れないように自分の胸に押し付ける。
「しょう……た……」
「……おやすみ、浩明」
「うん……おやすみ」
抗うのをやめた浩明が、力を抜いて背中に寄り添ったのがわかった。
背中が温かい。久しぶりの人の温もりに、いつのまにか翔太郎もうとうとしたのだった。
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