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浩明の目をばっちりと見据えてそう言いきってやると、不意を突かれたように視線が揺らぎ、浩明の顔は赤くなった。
「そ、それならよかったよ」
ぷいっとそっぽを向いた浩明がベッドに入った。こちらに背を向けているのでその表情は読み取れない。翔太郎も続けて布団に入ると、浩明を背中から抱き寄せた。びくっと一瞬体を硬くするが、あとはされるがままになっている。
「そういえば……翔太郎って変わったよな」
「そう?」
「ゲイバーにいたのも驚いたし、そもそも水商売なんて一番馬鹿にするタイプかと思ってたから」
そう、翔太郎は確かにそういう奴だった。だが、予期せぬことが重なり、どん底で手を差し伸べてくれたのは、ゲイのママだったのだ。
調子のいい時に翔太郎に群がっていた輩は、翔太郎の失墜が顕著になってくるとみるみる減っていき、本当に困っているときには周りにひとりもいなかった。
「たしかに嫌なタイプだったよ、俺」
「いろいろあったんだろうな」
「ママから聞いてないのか?」
「あの人はそういうのペラペラしゃべらないでしょ」
「……確かに」
それきり、浩明は黙ったままだ。
「聞かないんだな……」
「ん?」
「もっと根掘り葉掘り聞かれるかと思った。っていうか、興味もないか」
「そうじゃないけど、聞かれたくないこともあるかなと思って」
後ろから回した翔太郎の腕に浩明がそっと手を重ねた。
「そういえば……お前、いいのか?」
「なにが?」
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