抱き枕の恋ごころ

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 お客様の中には、立ち上がりかけた人もいる。さすがにこのままではまずいと、ママの方をちらっと伺うと、頷かれる。ママがにこやかにボトルを持って、気色ばんだお客様達の元へ行ったので、翔太郎は福石を店の外に出そうとやんわりと手を取った。 「触るなよ、ホモが伝染る」 「ちょっとアンタ! さっきからなんなのよ」  お客様の中には翔太郎のファンもわりといるし、それまで事の次第を静かに見守っていた人もさすがに黙ってはいられなくなったようだ。それをきっかけに店の中が悪い感じにざわついてしまった。  ――パシンッ。  乾いた音がして、店の中は一瞬で静まり返った。浩明が、福石の頬を張った音だった。 「な、なにするんだよ……お前もホモか?」 「そーだよ。当たり前だろう、ここはゲイバーなんだから」 「はっ……やっぱりな」 「でも、あなたもお仲間でしょう。ここにいる人、みんなにバレてると思うよ」 「なっ! なにいってるんだよ。そんなわけないだろ」 「いるんだよね、あなたみたいな人。同族嫌悪っていうの? 自分のセクシャリティを認められないからって過剰反応するんだよね」 「ちがっ……何言ってるんだ」 「でもね、残念ながら翔太郎はそうじゃないよ」 「…………え」
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