抱き枕の恋ごころ

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 一回の金額が決して安くない成立金でも、そのおかげでお客様とゲスト、両方の質を保てるというのが、ママの持論だ。  実際、トラブルもほとんど起こらず店の雰囲気もいいので、ここで出会い、カップル成立となった後も店で飲むことも多いし、破局して戻って来る場合もめずらしくないから店は常に盛況だ。まあ、たまに今彼と元彼がバッティング……なんていうハプニングもあるが、そういうときこそママの強面が役に立ち、トラブルを未然に防いでいる。 「そういえば……ゲストの経歴書リストに写真がない人がいましたね」  リストの人物を暗記させられているとき、写真のないページがあった。『浩――HIRO』という名前の他は、情報もあまりなかった記憶がある。  今までそんなことに興味を示したことがなかったので、ママは少し意外そうな表情になった。 「翔ちゃんがそういうこと気にするなんて珍しいわね。浩くんは、そうね……レジェンドかしら」 「レジェンド?」 「今は海外勤務だとかで何年も会っていないけれど、ここに通っていた頃は人気があって、すごかったから」 「ああ……そういうことですか」 「ハッとするほどきれいな子だったわね。ここだけの話……ゲストの中でもずば抜けているわ。ちょっと遊びすぎなところはあったけれど、根はとてもいい子だし」  声のトーンを抑えながらも、ママは彼を称賛した。
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