抱き枕の恋ごころ

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「レジェンドってお前だったのか、浩明」 「レジェンド? なんだそれ」 「驚いた……ふたりは……まさか知り合いなの?」 「……高校の、同級生です」  浩明はスツールへこしかけた。先程の古郡とは違い、いたって無造作な仕草なのに妙に存在感があった。すでにフロアーにいた何人かの男たちが浩明を目に留め、戦闘態勢に入ったのがわかる。  背はそれほど高くないが、顔が小さく、手足の長い細身の身体はバランスがいい。たしかに昔からきれいな男だったが、どちらかというと地味な印象だった。  それが年齢を重ねたことにより中性的な美少年から美丈夫に成長している。その姿は妖艶さすら感じる程だった。 「翔太郎、そんな珍獣をみつけたような顔しないでよ」  不機嫌そうな浩明に文句を言われてはじめて、翔太郎は自分の不躾な視線を意識した。 「久しぶりだったからつい……ご、ごめん。」 「どっちかっていうと、こういうところに翔太郎がいる方が、俺としては不可解なんだけど」 「…………だよな」  浩明に責められるのも無理はない。翔太郎はそれだけのことをしているという自覚もあるので謝ることしかできなかった。それきり、ふたりの会話は止まってしまった。  その後も翔太郎は仕事をこなしながら、少し離れた場所にいる浩明を観察していた。フロアーで浩明の争奪戦に競り勝ったであろう男が、自信満々に浩明の元へ歩み寄る。 「隣、座ってもいい?」 「ん……えっと、ごめん。久しぶりにここへ来たばかりだから、もう少し雰囲気を楽しみたいんだ」  浩明にやんわりと断られた男は、少し肩を落としてその場を離れるが、次のターゲットを見つけるといそいそとそちらへ移動する。切り替えの早さはこういう店では強みになるなあと、翔太郎は感心してしまう。  同じようなことが浩明の飲み物を作る間、すでに三回ほどあった。
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