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星は落ちている
二月十四日の夜、星が落ちたような町中を一望できる展望台、高校生の女の子が一人、好きな人を待っている。
展望台に登る道は石階段だが、中腹を越えると木造の階段になる。普段は地味な印象、バレンタインとなると話は別で、階段の変化が特別な日への境界を演出する。
高校生の女の子は、最後の一段の階段で座っている。
彼女の後ろで夜景を背景にして写真を撮ろうとしている男女がいる。
高校生の女の子は男の後ろ姿を見ながら呟いた。
「私も、写真撮りたい」
男は言う。
「次は、お前の番な」
写真を撮っている女は「もう一枚」と返事をした。
階段で座っている彼女は夜景に顔を背けたまま、大学生の男女を見ている。憧れは夜景の美しさよりも美しく見え、彼女の心と目は憧れを選んだ。
「まだ来ない」
隠す気なく胸の前に大事に抱えられたチョコは、彼女の気持ちの在り方そのものだった。
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