恋する透明人間

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高校に進学した僕は、好きな音楽を続けるために、中学と同じく吹奏楽部に入部した。 この吹奏楽部に美穂(みほ)ちゃんという気になる女子がいて、僕は、この美穂ちゃんのことが好きになっていた。 美穂ちゃんは、少しボーイッシュな感じで元気が良く、周りのみんなを笑顔にする魅力的な女子だ。 僕は、好きになった美穂ちゃんに声をかけて、学校帰りに一緒にコーヒーショップに立ち寄ることにした。 お互いに飲み物を注文して席に着くと、美穂ちゃんは、吹奏楽部内の噂話をしはじめた。 誰と誰が付き合っているらしい…といった話である。 美穂ちゃんは、僕にはまったく興味がないようだったが、僕は後で後悔したくないと思い、美穂ちゃんに告白することにした。 僕が美穂ちゃんに向かって告白しようとすると、突然美穂ちゃんが悲鳴を上げたのである。 僕は、あわてて自分の手を見ると、やはり手が透明になっていた。 僕は、中学の頃に、同じ体験をしていたことを思い出した。 美穂ちゃんを落ち着かせようと、僕は、 「驚かないで…僕はここにいるよ」 と声をかけた。 告白をやめて落ち着くと、僕の手は、元通りに戻っていた。 美穂ちゃんは驚いた表情で、不思議そうに僕の顔を見つめていた。 こんな感じで、告白しようとすると事件が起きるのである。 その後も、告白しようとするたびに、このようなことがあり、僕は女性を好きになることをあきらめていた。 本当なら、そろそろ結婚を考えてもいい年齢だが、恋愛をあきらめていた僕は、特に目標もなく、ただ何となく平凡な毎日を送っていた。
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