恋する透明人間

5/9
前へ
/9ページ
次へ
次の日の朝会社に出社すると、神崎さんはすでに出社していて、いつものように元気に明るく挨拶してくれた。 「若林君、おはよう!」 僕は、神崎さんの笑顔とこの一言で何故か元気が出て、今日も1日頑張ろうという気持ちになれるのである。 僕は、少しずつ神崎さんのことが気になる存在になっていった。 神崎さんは、時間があるときは、時々僕の席に来て、仕事で困ったことはないかと、気にかけて質問してくれたりした。 夜、残業していると、神崎さんは必ず、 「何か手伝おうか?」 と声をかけてくれた。 こんなちょっとした気遣いが僕は嬉しくて、何となく幸せだなと感じるようになっていた。 ある日、明日までに提案書を作成しなければならず、今日は徹夜を覚悟していたら、神崎さんが声をかけてくれて一緒に手伝ってくれることになった。 神崎さんは、自分の上司に掛け合って、僕の仕事をヘルプすることについて許可を得たようだ。 僕は、仕事が少し切羽詰まっていて、精神的にも焦って余裕がなかったが、神崎さんは冷静に僕にアドバイスしてくれた。 結局この日は、朝まで完徹で、朝やっと提案書が完成した。 僕は、疲れてヘトヘトだったが、神崎さんは嫌な顔ひとつぜず、また、疲れた顔ひとつせず、朝まで僕に付き合ってくれた。 僕は、神崎さんに頭が上がらない思いだった。 僕は、神崎さんに声をかけた。 「神崎さん、本当にありがとうございました。  今度お礼に、ビールおごります!」 すると神崎さんが、 「ホント、やった~」 と元気に笑顔で答えてくれた。 この神崎さんの笑顔を見て、僕もとても嬉しくなり、徹夜明けであるにもかかわらず疲れは吹っ飛んでしまった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加