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「おーきたきた。
元気そうじゃねーか。」
そう言って出迎えてくれたのは、主治医の高杉だ。
年齢は、たぶん30代。
未だに独身。
「うん。」
「うんって、お前なぁ。
相変わらず愛想ないねぇ。
そんなんで学校やってけんのか?」
うーん。
どうだろ、やってけてる…のかな。
「嘘だよ。
お前は、ケラケラ笑ってるようなタイプじゃねぇもんな。」
先生はこういう人だった。
一旦下げといて、反応を見てから持ち上げる。
俺の事をよく分かってるから。
少し意地悪で、とっても優しい人。
人間味のない病院の中で、ここだけは安心できる場所。
「そのままでいいよ。
ユイト君はユイト君らしく。
素直なままで。」
なにそれ。
ちがう。
全然素直じゃない。
「素直だよ。
とても。」
「…え?」
何も喋ってないのに。
「ふふ。
なんで思ってること分かるのかって?
そんなの簡単じゃないか。
ユイト君はすぐ顔に出るからね。」
やっぱり、何でもお見通し。
強がりも、不安な気持ちも、本当は全部分かってるんだろうな。
「ユイト君ほど素直で純粋な高校生を、僕は見たことがない。」
まじかよ。
子供みたいじゃん。
「フフフ。
さっ、雑談はやめて。
診察、診察…っと。」
ほとんど先生が喋ってたのだけど。
だけど、ちょっと救われた、かも。
やっぱり先生はすごい。
「ん?なんだ、ボーッとして。
胸の音診るから、服上げろよー。」
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