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アッキーの所属するサッカー部は、いわゆる走り込みというのをしているようだった。
だけどアッキーは、その集団から少し離れたところにいた。
別のメニューをしているのだろう。
完全復活などと豪語してたが、まだ思いっきり走ったりするほど本調子ではないのかもしれない。
それでも徐々に回復しているアッキーを見て、嬉しくもあり、同時に羨ましくもあった。
かなりの時間、アッキーの方を見ていたのだと思う。
ふと、アッキーと目があった。
アッキーのクリクリっとした目が一層大きくひらかれて
アッキーの顔が少し曇る。
いつもの笑顔が返ってこなかった。
普段見ないアッキーの雰囲気に戸惑いつつも、何もしない訳にもいかず手を振ってみる。
するとアッキーは困ったような顔で、はにかんだ。
やっぱりいつもと違う。
…そっか。見られたく無かったんだ。
まだ本調子ではない姿を、誰にも見せたくなかったのかもしれない。
申し訳ないことをしたな。
俺だって、病院での弱った姿は誰にも見られたくない。
こういうことは誰よりもよく分かっているはずなのに。
気がきかない自分が腹立たしい。
だからそれからは、運動場に目を向けずに早足で学校を後にした。
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