一、遅刻してきた美少女と、曲がり角で。

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自分の家の周りには黒い靄は現れない。 段々と消えていくというか、近寄れないのかもしれない。 それか、人が賑わっているからなのかな。 私が住む大分県日田市の豆田町では、二月中旬から3月まで『天領日田おひなまつり』が行われていて、その時は自分の家に帰るまで、黒い忌みには出会わなかった。 その分、自分の家に入るのも一苦労だ。 観光客が道なりに溢れているから。 元、旧家の家のひな人形が展示し、観光客に公開、展示されるこの期間は大賑わいだ。 私の家は豆田町で駄菓子屋をしてるから関係ないけど、お母さんの実家が旧家の酒造で、お雛祭りのひな人形を飾っているために、観光シーズンは忙しい。 今は、その片付けに追われている始末。 「ただいまー」 駄菓子屋から家へ入ると、既に近所の子供が数名、アニメのキャラシールカードのくじに集まっていた。 「比奈(ひな)、帰ったのー?」 のんびりした母の声と、見知らぬ靴を玄関で見つけたのは同時だった。
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