一、遅刻してきた美少女と、曲がり角で。

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「帰ったよ。あ、サボったんじゃなくて、今日は授業が午前中まででさ」 「香りがする……」 居間へ入った瞬間、鼻をスンスンする音と共に、誰かに思いっきり自分の匂いを嗅がれた。 「すっげ。なんか不思議な香りがする。わ、ちっちゃくて可愛い。わー目が大きいし、髪も艶々だし」 「……この人誰」 熱々のお茶を嬉しそうに飲みながら、泥棒が持ってそうな唐草模様の大きな風呂敷の隣に、年齢不詳のチャラそうな男の人が座っている。 金髪の髪を無造作に後ろへ結び、首にはタオルを巻き、上はジャージなのにズボンはジーンズ。 ピアスは一杯ついているし、一見、鼻筋も良く背も高そうでイケメンなのだが、笑顔が嘘くさい。 「この人、うちの家に駄菓子の修行に来た鳩(はと)君よ。東京の歌舞伎町でホストしてたんですって」 「ほっ!?」 「あはは、一年もしないで止めちゃったッスよう。あ、よろしゃーす」
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