一、遅刻してきた美少女と、曲がり角で。

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「比奈、そこに刀はあるの?」 お母さんが不思議そうに言うので、素直に頷く。 母は、感心して、いや違う。尊敬の眼差しでこの男を見ている。 「凄いわあ。私も大原八幡宮の巫女様が言うまで、とてもじゃないけど信じられなかったのよ。凄いわねえ。薫るのねえ」 「ん? 何がっすか? このリュックの中身っすか?」 正確には、リュックに突き刺さった妖刀『秘め百合』だ。 今まで見えたのは、二人。 どちらも日田に縁があり、神社やお寺で徳の高い人たちだけ。 「信用できない。一回、この男を刀で叩き切ってみてもいい?」 「ひいい。勘弁を!」 「比奈、止めなさい。あと、鳩(はと)君よ。覚えてあげてね」 「……覚えたくない」 うちののほほんとした家族ではこいつを受け入れてしまう。 私が、姑みたいにバシバシとイビッって追い出さなくては。 「鳩さん。早速だけどお使いにでも行ってきて」
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