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「比奈、そこに刀はあるの?」
お母さんが不思議そうに言うので、素直に頷く。
母は、感心して、いや違う。尊敬の眼差しでこの男を見ている。
「凄いわあ。私も大原八幡宮の巫女様が言うまで、とてもじゃないけど信じられなかったのよ。凄いわねえ。薫るのねえ」
「ん? 何がっすか? このリュックの中身っすか?」
正確には、リュックに突き刺さった妖刀『秘め百合』だ。
今まで見えたのは、二人。
どちらも日田に縁があり、神社やお寺で徳の高い人たちだけ。
「信用できない。一回、この男を刀で叩き切ってみてもいい?」
「ひいい。勘弁を!」
「比奈、止めなさい。あと、鳩(はと)君よ。覚えてあげてね」
「……覚えたくない」
うちののほほんとした家族ではこいつを受け入れてしまう。
私が、姑みたいにバシバシとイビッって追い出さなくては。
「鳩さん。早速だけどお使いにでも行ってきて」
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