一、遅刻してきた美少女と、曲がり角で。

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おせんべいを食べてお茶飲んでから、渡しに行こう。 そう思って嬉野のお茶っぱで自分用の急須にお湯を注ぐ。 お母さんは、それを見て可愛く産んだのに年寄り臭いと憐れむが、これこそギャップ萌えするべきじゃないのか。 「うわ。この煎餅、美味」 「そうなのよ。今日ね、お母さんの家の旧家の方に」 「ぎゃあああああ、お嬢さん、ヘルプミー!」 せっかく煎餅話に花を咲かせていたのに、良いところで思いっきり邪魔が入った。 「で、旧家の?」 「え、ああ。お雛さまを福岡の物産展で展示させてほしいって言う業者さんからの賄賂なの。断っても、これだけは受け取ってくださいって」 「ふうん」 パリっと気持ちがよく割れて、何度も豪快な音を立てていると、外から鳩さんの断末魔が聞こえてきた。 お母さんと顔を見合わせ、面倒くさいけど私が行くことになった。 間にいる、花屋のお爺ちゃんは今日は出ているのだろうかと、鳩さんの心配なんて一ミリもせずに。
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