一、遅刻してきた美少女と、曲がり角で。

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お婆さんが亡くなって半年。 お爺ちゃんはみるみる元気を無くして、いつもぼんやりと椅子に座って外を眺めてばかりだ。 小さな頃は、よくなぞなぞとか問題を出してもらったりして、もっと覇気のある元気なお爺ちゃんだったのに。 穏やかでにこにこ笑うお婆さんがなくなってから、良く分からない謎かけが増えてきた。 私はその見えない答えのせいで一問も解けたこともないし、正解を教えてもらったこともない。 答えなんてないかもしれないけど、花屋のおじいちゃんとお喋りできるだけでも嬉しい。 「雷神っすね。雷神」 「うわ、生きてた」 写真屋のお店のらせん階段を上った二階から、鳩さんが手を振っている。 断末魔どころかピンピンしてて、死んでない。 「お嬢さん、助けて下さいよ! 此処、めっちゃ香りがキツイし怖いッス」
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