ただし、砂糖抜き。

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「向井さんごめんね、こんなときに残業させちゃって。……きみも予定あったんでしょう?」 「いいんです課長。それより、さっさと終わらせちゃいましょ」  このあとの予定のことには触れず、課長にこれ以上気を遣わせないようにっこりと微笑んで、またPCに向かう。  バレンタイン直前の金曜日。今は定時を一時間ほど過ぎたところ。  イベント前の週末ということもあり、他の社員はもうみんな退社してしまった。ここ人事課に残っているのは、私と本田課長の二人だけだ。  今日は課長が席を外す回数がやたらと多くて、彼の補佐についている私は、就業時間内に業務を終わらせることができなかった。  さっきから私と課長は、早く仕事を終わらせるべく、ひたすら無言でキーボードと格闘している。  ようやく終わりが見えてきたかなという頃、まるでタイミングを見計らったように静かなオフィスに内線のコールが鳴り響いた。
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