ただし、砂糖抜き。

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「はい、人事課です」 『すみません、総務課からですけど。……本田課長はまだ残っていらっしゃいますか?』   電話に出たのが私だったせいか課名しか言わなかったけれど、この声はたぶん大沢先輩だ。  (オーバー30の方の)アラサーの大沢先輩は、数多いる女子社員の中でも、特に婚活に熱心なことで有名だ。ちょっと前まで他の人のことを追いかけてたくせに、もう課長に乗り換えたんだ。 「お待ちください。……課長、三番に総務課からお電話です」 「……あー、わかった。ありがとう」  こんな時間に内線が鳴るなんて滅多にないことだ。なんとなく電話の相手と内容を察したのか、課長は私にわかるかわからないかくらいの動きで微かに眉をしかめた。  もうこれで、今日何度目の呼び出しだろう。ため息を吐き出しながら、課長席の後ろに並べられた幾つものカラフルな紙袋に視線を送った。
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