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「向井さんごめん、俺ちょっと総務に行ってくる」
「わかりました。先に進めておきますね」
私が答えると、課長は「お願いね」と言ってオフィスから出て行った。
見栄っ張りの大沢先輩のことだ、課長のためにきっと誰もが知る高級ブランドの目が飛び出るような値段のチョコレートを用意してるんだろう。
でも私は知っている。どんなに高級なチョコレートも課長の心を動かすことはできない。
だから『にわか』はダメなのだ。ちゃんと課長のことを見ていれば、誰にだって簡単にわかることなのに。
頼まれていた資料をプリントアウトし、ちょうどファイルにまとめ終わったところで課長が戻ってきた。
やはり思っていた通りだった。課長は左手にベルギー王室御用達ブランドの紙袋を提げている。
きっと大沢先輩も、課長の気も知らず空気も読まず、かなり粘ったんだろうな。課長は見るからに疲れ切った表情をしていた。
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