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娘の彩奈が何かに夢中になっているのに気付いたのは、夕食の片付けを終えてお茶を飲もうとしていた時だった。
「彩奈? 何してるの?」
「んー……」
返事も曖昧になるほど、彩奈はリビングにぺたりと座り込んで何かを読んでいる。
小学六年生になる娘は、反抗期なのだろうか。
前のように、呼びかければすぐに返事が返って来ることも少なくなってきた。
後ろ向きの彩奈から、時々ページをめくる音がする。
なんとなく気になって背後から彩奈の手元を覗き込むと、ノートをめくっていたようだ。なんの変哲も無いノートだけど、書かれている文字は彩奈の筆跡とは違う。
「なぁに? 交換日記?」
頭上で問いかけると、やっと彩奈は顔を上げた。
そして、そう、と一言短く答える。
「お母さんは、『友情』ってずっと続くと思う?」
「え? 友情?」
聞かれた事はごく普通の質問だけど、思春期の子供にとっては重要な質問かもしれない。そう思うと、肯定するにしても、否定するにしても、彩奈の納得のいく言葉ってなんだろう、と考えてしまう。
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