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「そうねぇ。
……ずっと友達でいたいって、お互いに願い続ければ続くんじゃないかしら」
お互いに願い続ければ。
それは、思いのほか大変で、難しい事だ。
それでも今の自分にはそれくらいしか言える事はなかった。
そんな的を得ない答えでも、彩奈は不満はなかったようだ。
「それじゃ、大丈夫だね」と言いノートを膝の上に乗せたまま、テーブルの上のミカンを食べはじめた。
「なにが? 交換日記の子に、そう言われたの?」
「そうじゃないけど。
ーー今日ね、私お掃除当番だったの。
お母さんも同じ小学校だった、って言ってたよね?
お母さんの時から飼育小屋ってあった?」
突然話を切り替えられて、驚きつつも「あったよ」と返事を返すと、ミカンを頬張りながら、彩奈は再びノートに目線を下げた。
最近、彩奈は話をはぐらかすように会話を変えることが多々ある。ひょっとして、交換日記の相手と気まずくなっているのだろうか。
「その日記の相手は、真央ちゃん?
喧嘩でもしたの?」
心配になって聞いてみると、彩奈はまた顔を上げて「違うよ」と言った。
「交換日記の相手は『サエキカオリ』さんだよ」
その名前を聞いて、心臓が大きく跳ねたように感じた。一瞬にして忘れていた過去の事が鮮やかに脳裏に蘇る。
私が驚いた事など気付いていない彩奈は、ミカンを食べ終えると「お風呂入るね」とリビングを後にした。
リビングのテーブルに残されたノートには、見覚えのある筆跡が残されていた。
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