交換日記

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ある日の放課後。 生き物係だった私は、校庭の隅のウサギとニワトリのいる小屋の掃除をしていた。 本当は男女4人グループで掃除をするのだが、この日はもう1人の女子が風邪で休んでいて、2人の男子は掃除を面倒がって帰ってしまった。 いつもは4人でやる掃除をたった1人でこなさなければいけない。それだけでも気が滅入るのに、春の雨は桜の花びらを全て地面に叩き落とし、小屋の中にも茶色く変色した花びらがたくさん散らかっていた。 逃げたい気持ちをうんと抑えて、掃除小屋から箒とちりとりを持ち出して桜の花びらとうさぎの糞を黙々と集めていると、背後に人の気配を感じた。 「……宮本さん一人で掃除してるの?」 振り返ると、佐伯香織が緑色の金網に手をかけて私を見つめていた。 「……うん。他のお当番の人たち、来なくって……」 私と佐伯香織は、この時始めて会話を交わした。 同じクラスであっても彼女の周りには常にクラスでも派手な部類に入る女子達が纏わりついていたからだ。 いつか佐伯香織と話してみたいと思っていたけど、クラスでもあまり目立たない私は取り巻きの彼女達の笑い声を横目にいつも本を読んでいた。
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