鳥屋敷

　近所に鳥屋敷がある。といっても、そこの家が鳥たくさん飼っているとかじゃない。
　日当たりとか屋根の傾斜とか風向きの具合がいいらしく、雀や鳩がやたらとそこの家の屋根にたむろしているのだ。
　そのせいで、そこの家は近所から鳥屋敷と呼ばれていたのだが、ある日突然、一羽の鳥もそこの屋根に降りなくなった。
　そこの家はほとんど近所つぎあいをしないのだが、それでも以前、鳥がやたらと来て、うるさいし糞もするし羽毛も落ちるしで困っているという話を聞いたことがある人がいた。だから、ついに業を煮やし、何らかの対策をしたのだろうということで納得した。
　でも、鳥屋敷が鳥屋敷で亡くなった数日後、その家は原因不明の火事で全焼してしまった。
　幸いにも、家の人達は留守で無事だったようだけれど、だからこそ出火原因が判らず、放火の線も考えられるということで、怯えた一家はどこかへ引っ越してしまった。
　その後、焼け跡は更地になり、今も空き地のままだ。
　ちなみに、その家がなくなった後、立地条件的に、俺の家が次の鳥屋敷になった。
　あの家の人が見簿していたように、確かにうるさしい糞や羽毛の被害もある。でもウチの人間は何も対処せずに放置しているだけだ。
　…だって、近所に住む、もう年だから外に出ず、一日部屋から外を見てるだけのばあちゃんが見たって言うんだ。
　そこの家にたくさん人が来て、それ以来屋根には鳥が寄りつかくなった。でもその翌日から、子供くらいの人影が屋根に上っているのが見えるようになったって。
　近所付き合いがなから、子供がいて、屋根で何かをしているのかと思っていたけど、ある日、その人影が屋根の上で手を叩き出した。そうしたらそこから火花が飛び散り、たちまち家が燃え出したって。
　ばあちゃん自身、見たものに確信はないらしいし、歳も歳だから、みんな、ボケが始まったんだうと言っているけど、もしそれが事実なら、鳥を追い払ったらウチはどうなるんだろう。もしかして、その子供くらいの人影が屋根に現れて、手を叩いて火花を起こされたりするんだろうか。
　多分、何も起こらないとは思うけど。ばあちゃんが見たものは何かの見間違いで、火事は偶然だと思うけど。
　それでも、結構な鳴き声や足音の騒がしさの中、ウチの家族は全員で、鳥達の動向を気にし続けている。

鳥屋敷…完