唇が触れるまであと五秒

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  「ミズキちゃんって、すごく優しいし明るいし、イイ女だよね」 カラオケの個室の安っぽい合皮のソファーの上で膝を抱え、私のことを褒め称える村瀬の言葉をふくれっ面で聞く。 「顔もすっごく可愛いし、髪もサラサラだし、足も綺麗だし。あ、ちょっと胸は寂しいけど」 余計な一言に膝に埋めていた顔を上げ睨むと、 「ジョーダンだよ」 とクラスメイトの村瀬は、端正な顔に甘い微笑みを浮かべて首をかしげた。 すこし明るい色に染められたふわふわの髪と、ネクタイを緩め着崩した制服が、男のくせにやけに色っぽくて、なんかずるい。 「俺はそのくらいの大きさが一番好きだよ。ちょうど手の中に収まるくらいの」 制服の上に大きめのセーターを着た私の胸のあたりを見てそう言った。 「こっちみんなセクハラ男。……それに村瀬の好みはどーでもいいし」 「可愛い。照れてるの?」 「照れてないっての」 「顔赤いよ」 膝を抱えたまま「うー」と唸る私を見て、村瀬が楽しそうにクスクス笑った。
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