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「本当だよ。ミズキちゃんがこうやって俺を呼び出すたびに、失恋してる」
「は?」
「人の気も知らないで、他の男のことで毎回泣いてさ」
「はぁ?」
「こっちが泣きたいよって話だよね」
ぽかんとした私に向かって、村瀬が意地悪な笑みを浮かべた。
「ねぇミズキちゃん。さっき俺が振られたら慰めてくれるって言ったよね?」
そう言いながらお姫様の手を取る王子様のように私の手を取り、その手の甲にそっと唇を押し付ける。
……伏せた長いまつげと白いまぶたが綺麗。
なんて思わず見惚れていると、村瀬は私の手に口付けたまま、視線だけをあげて静かに笑った。
皮膚に触れた温かく柔らかい感触に、全身の肌が粟立った。
一気に上昇した体温。
村瀬が私の汗ばんだ熱い手の平を指先でなぞり、上目遣いでくすりと笑う。
「ミズキちゃん、これから告白するから、失恋したら慰めてくれる?」
こちらを見つめる丸い瞳が、ゆっくりと弧を描いた。
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