20.美少女ご乱心

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 そういえば昔付き合った彼女が、「男の人は永遠に子供なんだわ。私たち女が世話を焼かないと、ほっとけばすぐダメになるの」みたいなことを言っていた気がする。  それは全ての男に当てはまることではないと思う、と反論したものだが、言い合いになって最後には根負けした。  そのやり取りを話したら、「逆に女は自分が居ないとダメになるようにどんどん進んで男の世話をするんだろ。他の女に逃げないように束縛するってのもあるけど、自分に依存させて得られる一種のハイみたいなもん」と誰かが言ったような気もする。 (あれ、その誰かは久也だったかも)  首を捻りそうになった所で、ユマロンガがクスリと笑った。 「冗談よ。聞き分けのない弟たちに比べたらよっぽどマシだわ」  少女はふと頬を緩めた。ぱっちり黒目の目元が優しくなり、ふっくらとした唇も笑みの形になった。  彼女はいつも被っている手ぬぐいを片手で解き、次いで髪留めも解いて、少し頭を振る。ボリュームたっぷりのぬばたまの髪が、胸辺りまで流れる。 (おぉ。カワイイ、ていうか色っぽい)  思わず瞬くのを忘れてしまうほどの美少女っぷりに驚いた。 (サリーにばっか気を取られてたけど、ユマちゃんもよく考えたら集落で見る女子の中でトップ5に入れる可愛さじゃ……人の好みによってはトップの座に君臨できそう)  従来の拓真の女性の好みといえば、健康的な肌色に程良い筋肉、欲を出せばつり目美人でうなじとくびれの綺麗な女の子だった。顔立ちはシャープと言うのか、彫りが深い方が好きだ。胸やヒップについてはとやかく言わない。  肌色は別問題として(何故なら集落の人の肌色は地なのか焼けているのか判断できないから)ちょうど巫女姫サリエラートゥみたいな人が好ましいのである。元気、活発、サバサバ。  だが、盲点だった。こういう女性の魅力も味がある。家庭的な子とはあまり縁が無かったから新鮮に感じるし、話していて悪い気はしない。 (そっか、きっと密かにもてるよね。何せ巨乳は正義だし!)  柔らかい曲線と小柄な体型からは跪きたくなる美しさよりも守りたくなる愛らしさが感じられる。もっと野郎どもがまとわりつきそうなのに、あまり見ないのは何故なのか。  長い時間見惚れているからだろうか、段々とユマロンガの表情が怪訝そうになっている。拓真は速やかに話題を提供した。 「そういえば弟君、あれからどうなの」
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